オーストリアにあるマウトハウゼン強制収容所(KZ Mauthausen)は御存知ですか?
KZはドイツ語のKonzentrationslagerの略で強制収容所の名前の頭に用いられます。
日本で"強制収容所"と聞けばおそらくアウシュヴィッツを思い浮かべる方が多いでしょうか?
強制収容所はミュンヘン郊外のダッハウを始め、ヨーロッパ中に作られ、基幹強制収容所(Stammlager)の他にそれらに属する外部強制収容所(Außenlager)、小さな収容所も含め、少なくとも20人以上を収容し、1カ月以上存続していた収容所の数は4万2千を超えると言われています。
オーストリアには強制収容所はMauthausenをStammlagerとして41箇所もあり、ウィーンにも4カ所ありました。
マウトハウゼン強制収容所はオーストリアでは最大の、尚且つナチス軍により最も残虐な強制収容所であるランク3に位置付けられていました。
マウトハウゼン強制収容所はこの歴史的残虐行為を後代に伝え、多くの犠牲者の慰霊も兼ねて無料で一般公開されています。
マウトハウゼン強制収容所はKZ-Gedenkstätte Mauthausenとしてウィーン中心部の国立オペラ座から車で167km、2時間程走ったリンツを州都とするOberösterreichの一角にあります。
公共交通機関の国鉄、バスを利用しても行けますが2時間半~3時間以上かかります。
ここに着いたらまずインフォセンターに行きましょう。
収容所内の地図をもらえますのでこれは絶対に必要です。
田舎道を走って収容所入り口に来ると、大きなお城のような壁が目立ち、よくイメージされる陰気で憂鬱な残虐な雰囲気はあまりありません。
アウシュヴィッツとは全然違います。
ここを歩くと分かりますが、気軽に散策を楽しめるような雰囲気に意図的に作られて演出されている気がします。
大量虐殺があった歴史的犯罪行為をしっかり後代に伝える、当時の様子を上手く残しながらしかしオーストリアの郊外にあるようなのんびり散策が楽しめるアトラクション的な要素を取り入れています。
生々しい残虐行為を精神的にケアーしながらしっかり事実を伝えるわけですね。
写真には見られませんが、右側には明らかに新しい建物があり、そこにインフォセンターがあります。
この部分はかつてのSS(Schutzstaffel...ナチス親衛隊)の領域でした。
ここで地図をもらいましょう。
有料ですがオーディオガイドも借りられ、また優秀なアプリ(iOS、Android)もあるのでここでじっくり時間を取れる方はアプリをインストールしておきましょう。
ただ、どちらも日本語はありません。
見学のお勧めルートはアプリや地図にある通り、まず壁の外側を歩いて行きましょう。
この位置からだと収容所の門みたいなものが見えるので、ここから入りたくなってしまうかもしれませんが、ここは出口になるので入ることは出来ても入らずに外側を壁沿いに歩いて行きましょう。
この壁は強制収容所とSS領域を分けていたもので、囚人たちはこの壁の中に保護拘禁されていました。
残虐な行為がくり返し行われたのはほぼこの中です。
左側の緑地帯には木が植えられていますが、そこは大量殺人があったかつてのSanitätslagerです。
壁の終わりまで歩くとルートが右に折れます。
すると記念像のようなものがたくさん並んでいる広々とした空間に出ます。
この空間はDenkmalparkで、ここに閉じ込められていた囚人達の国が、様々な慰霊碑を立てています。
オーストリア、ドイツ、オランダ、ポーランド、イギリス、かつてのソ連、スペイン、イタリア、かつてのユーゴスラヴィア、ハンガリー、ブルガリアなど国際的です。
この領域はのんびり散策をしながらそれぞれの国が建てた慰霊碑を見てみましょう。
この領域から囚人たちが強制労働を強いられた石切り場(Wiener Graben)が見られ、有名な死の階段も生々しく残っています。
50kgもの花崗岩を背負ってこの階段を上らされたわけです...。
Denkmalparkを抜けて行くと収容所に入る入り口が見えます。
この右側には司令部の建物が当時のまま残されています。
ここに連行された囚人達はこの入り口から収容所内に入り、持っているものを全て置き、並ばされて最初の嫌がらせが行われながら建物の地下に行かされました。
そこでは髪の毛などを全て剃られて、シャワーを浴びせられ、用意された囚人服に着替えてブロックに連れて行かれるわけですね。
マウトハウゼン強制収容所でよく紹介される光景です。
囚人たちのブロックが左側に並び、右側には洗濯ブロック、厨房、刑務所、病棟、この大きな真ん中の広場が有名なApellplatzで、毎日3回は囚人達が無意味に並ばされて点呼が行われました。
囚人達のブロックは5戸x5列分の24戸ありましたが、現在残されているのは2戸で、右側同様中に入ることができます。
いじめ、嫌がらせは毎日のこと、そしてもちろん殺人も頻繁に行われました。
解放前の数か月だけで45.000人が命を奪われ、1日200人のペースで殺されて行きました。
左側奥はかつてのブロックは壊されていて、緑地帯になっていますが、どこに建物があったかハッキリ分かり、ユダヤ人が閉じ込められていた場所、遺体を火葬炉で焼き、そこからから出てきた灰をまいた場所、後に作られたテント領域も見られます。
ここに見られる当時を再現した電気有刺鉄線(380V)も生々しさを物語っています。
囚人ブロックの奥は囚人達が今でも埋葬されているお墓であるLager2、Apellplatz奥の行き止まりの壁の奥はLager3です。
右側置くのかつての病棟は1階、地階が博物館になっていて、ここでマウトハウゼン強制収容所についてもっと深く知ることができます。
ここでは必ず地階に行きましょう。
この病棟と隣接している刑務所の地階に火葬炉が3つ(No.2はナチス軍が証拠隠滅のため取り外した)、ガス室、死刑場などが今でも生々しく残り、多くの慰霊が捧げられています。
また”Raum der Namen” という空間があり、ここで、もしくはここに属するGusenなどの外部収容所で亡くなった人の名前がぎっしり書かれています。
Mauthausen強制収容所は1938年8月8日~1945年5月5日にアメリカ軍に開放されるまでに190.000人が収容され、90.000人以上が虐殺されています。
ここはゆっくり見学することをお勧めします。
前述したように日本語は残念ながら全くありません。
ウィーンからの日帰りツアーが可能で、お勧めは専用車との観光で7時間全日観光で、3時間弱ここに滞在できます。
電車を利用した公共交通機関だと9時間~10時間あった方がいいでしょうか。
私が御案内しますので御興味ある方はお問い合わせ下さい。