ウィーンには変わった博物館が多く存在する中で、今日話題にする病理・解剖学博物館も結構おもしろい!?博物館ではないかと思います。
ここは2012年から自然史博物館の管轄になり、それ以来建物の修復と改装が行われてきて、2020年には再度オープンしました。
この博物館は一見変わった建物の中にあり、開館時間が限られていることや、全くウィーンらしくない内容でもあることから一般の人はまず行かない博物館でしょうか。
この一見不思議な円柱の建物がNarrenturm (ナレントゥルム)で、"Narr"は愚か者、たわけ、あほう、変物なんて辞書には出ています。
Turmは塔ですから変人塔とか狂人塔、もしくはきちがい塔なんていう日本語になるのでしょうか。
ここはいわゆる現在で言えば精神病院で、当時、精神病の人々をここに隔離しました。
マリア・テレジアの長男ヨーゼフ2世皇帝が、妹のアントワネットを訪ねた時にフランスの様々な福祉施設を訪れました。
その後、ウィーンのAlsergrundにあった身体障害者施設を改築させ、ヨーロッパで当時一番モダンで大きな一般が通院できる病院を作り、病院、産院、精神病院の3つの部門に分かれていました。
このNarrenturmはヨーゼフ2世が自ら投資してJosef Gerlという建築家によって1784年に作られました。
目的は精神病患者の治療でした。
ヨーゼフ2世が亡くなった後、外で冷やかす人々から守るために壁が築かれました。
1852年からは治療困難で直ることのない人々がここにまわされ、1869年にここは病院としての機能はなくなりました。
その後は何にも使用されずいわゆる空き家であり、1920年に看護婦の住居や、ウィーン大学病院の倉庫としても使用されていました。
ちなみに19世紀後半から20世紀初頭にかけてウィーン大学の医学部は世界第一水準を誇っていたので医学の世界はドイツ語が主流でした。
1971年より病理学・解剖学博物館として公開され、2012年からは自然史博物館の管轄で引き継がれています。
今日、このNarreturmは重要文化財となっています。
Narrenturmは5階建ての円柱形をしていて真ん中に中庭があります。
それぞれの階には28の部屋があり、1階に玄関があるので、それを除いた全部で139の部屋があります。
部屋の大きさは奥行き3m,幅2.25m、高さ2.5mとかなり狭い大きさです。
各部屋には寝台とトイレがあり、200~250の患者が収容されていたようです。
このNarreturmは通称Altes A.K.H (アルテス・アー・カー・ハー)という今のウィーン総合病院が以前あった場所で、現在ではウィーン大学の"Campus"になっている広大な敷地の一角に立っています。
見学時間は
水曜日10:00~18:00、木、金10:00~15:00、土曜日の12:00~18:00です。