日本は猛暑日が続いていますが、群馬県桐生は40.5℃に達し今年一番の暑さになったようです。
こちらもウィーンも日中30℃を越える暑い日が続いています。
こちらでは熱中症という言葉はあまり聞かれませんが、水分補給は暑くなくても日頃から大事と頻繁に言われています。
さて、ウィーンの街は中心から外側にかけて多くの集合住宅が立ち並んでいますが、もう少し外側に行けば庭付きの一戸建ても多く立っている地域もあります。
集合住宅は日本で言えば5階、6階、7階など階数があるわけですが、多くはエレベーターがあります。
新しい建物は始めからエレベーターを付けて建設していますが、昔からある古い建物はエレベーターを後付けしたケースが多いです。
古い建物ではアンティーク風のエレベーターもあって、日本では見られないスタイルが多くあります。
エレベーターと言えばパーテルノステルというエレベーターは御存知ですか?
パーテルノステル(Paternoster)は循環式のエレベーターです。
このタイプはイギリスから発展したもので、1876年にロンドンのGeneral Post Officeに設置されたものが世界で最初と言われています。
でもこれは小包など郵便物の輸送を目的としていました。
1882年にイギリス人のPeter Hartが人間を輸送するための循環式エレベーターにアイデアを発展させ、1884年に最初に J. E. Hall社によって登場しました。
右の写真を御覧下さい。
これがPaternoster(パーテルノステル)です。
左と右2列にエレベーターそれぞれ上下し続けています。
左が上へ、右が下へ常に動いていて、利用する人はタイミングを見計らってかごに乗ったり、降りたりするわけです。
これを初めて見たらレトロな雰囲気で結構感動します。
私は30年近くウィーンに住んでいますが、ウィーンに住み始めた当初にウィーン大学で見たのが最初でした。
面白くて何回も行ったり来たりしたのを覚えています。
パーテルノステルはオーストリア、ドイツ、スイスなど、ヨーロッパでは1920年代よりかなり普及しました。
特にドイツには多く残されています。
オーストリアではウィーンのSchwarzenbergplatzにあるPaternosterが1910年製で、現在利用されているものでは世界で最も古いということです。
この写真のものはウィーンの市庁舎です。
ウィーンではこの市庁舎を入れて全部で7つのPaternosterが現在でも活躍していますが、オーストリアでは1960年代より、新しいPaternosterを設置することが禁止となりましたので、残っているものだけということになりますね。
上の写真は実際にかごに乗っている時の模様です。
速さは秒速20cm~25cmで、止まることがないので一番上、一番下に来た時にはどうなるのか興味深い所です。
もちろんかごがひっくり返るわけではなく、スライドされて循環していきますからどこかの階で降りなければずっと回り続けていることになります。(笑)
Paternosterの長所は待ち時間が無く、近い階同士の移動がすぐにできますが、短所は離れた階への移動に時間がかかること、安全性、物の輸送が出来ないこと、身障者に不向きであること、乗り降りする時に集中力が必要であること、などやはり現在では短所が多いわけですね。
ウィーン大学にあったPaternosterは残念ながら通常のエレベーターに変わってしまいましたが、まだまだ現役で活躍しているのもありますので、機会があれば是非見て下さい。