ウィーンは森の都とも言われ、ヨーロッパでは街の広さに対して緑の比率が最も高い街です。
中心部を歩いても緑が多いことがすぐわかり、外側にも多くの公園や庭園、そしてその豊かな緑を囲むもっと大きな緑がウィーンの森です。
ウィーンの森は比率的には南の森に行くことが圧倒的に多いですが、非常に不便な所にありながらも重要な見所が点在しているからです。
個人で旅行されている方は公共交通機関を利用して比較的簡単に行ける北の森に行かれることが多いでしょうか。
こちらはウィーン市の中にあります。
さて、多くの観光客が訪れるウィーンの森は北と南ということになりますが、西にもラインツ動物公園といった地元で有名な場所があります。
さて、今日はこのラインツ動物公園の中にあるエリザベート皇后ファンの方にとっては必見のヘルメスヴィラについて少しまとめておきます。
ここはウィーン市の中にあっても中心から簡単に来られる所ではありません。
前述したラインツ動物公園のLainzer Torからさらに1kmほど奥に歩いて行った所にひっそりと建っています。
この場所がウィーンの街とはとても思えません。
右の写真がヘルメスヴィラで、フランツ・ヨーゼフ1世が宮廷の煩わしい儀式などから離れたかったエリザベート皇后に贈った別荘的なとても美しい建物です。
皇帝フランツ・ヨーゼフ1世は1881年の夏にエリザベート皇后にヴィラを贈ることを決定し、当初は"Villa Waldruh“(ヴィラ ヴァルトルー)と呼ばれていました。
日本語に直せば"ヴィラ森の静けさ" です。
Carl Freiherr von Hasenauerというウィーンのリンク道路時代の有名な建築家により、1882年~1886年にかけて建設されました。
当初のVilla Waldruhが遅くても1885年には"Villa Hermes"に変わりました。
その理由はエリザベート自身の依頼によって"Hermes der Wächter"と呼ばれる彫刻が庭に置かれることになったからです。
1886年5月24日にフランツ・ヨーゼフ1世、エリザベート、末娘のマリー・ヴァレリーの3人でこの完成したヴィラを訪れています。
その後、エリザベートは亡くなる年1898年6月まで定期的に5月、6月頃に少なくとも数日、長い時は2ヵ月はここに滞在しました。
エリザベートが一箇所にかなり長く、しかも繰り返し滞在した場所はそう多くありませんので、そういう意味でもここは重要な場所ですね。
もちろん現在はウィーン市の管轄に入っていますので、博物館として一般公開されています。
ヴィラの入口は裏側にあって、建物の真ん中にあります。
入ると正面ちょっと右側に窓口があって入場料を支払います。
このスペースにはちょっとしたショップにもなっています。
チケットを手にしたら左に進むと、左上の写真に見られる素敵な階段を上がります。
2階が展示スペースになっていて、このヴィラに実際に置かれていた調度品、この建物の歴史的背景、エリザベートに関することなど面白い内容となっています。階段を上がって左方向が順路です。
右上の写真は最初の部屋Oktgonで、正八角形の空間です。
ここには日本製や中国製の工芸品なども置かれています。
この部屋の扉やガラスは当時のオリジナルです。
次の部屋はGarderobeで、このヴィラの建設に関する資料が見られ、当時のプラン、スケッチなどがあり、フランツ・ヨーゼフ1世とエリザベート皇后の肖像画が飾られています。
次の部屋はTurnzimmer・・・体操の部屋で右上の写真に見られるような内装です。
ここはエリザベートの体操部屋だった所で、古代ギリシャを思わせる人間のスポーツ的な絵が壁に描かれています。
Turnzimmerを抜けると細長い部屋がトイレだった所で、現在では1891年までの歴史的背景が展示されています。
そのれを抜けると左上の写真に見られる寝室です。
ここにはマリア・テレジア時代からの豪華なベットが置かれ、ハンス・マカルトによるシェークスピアの真夏の夜の夢の壁絵が見られます。
次の部屋はサロンで1897年までの歴史、またギリシャコルフ島アキレイオンからの調度品などが展示されています。
アキレイオンはギリシャのイオニア海にあるやはりエリザベートの別荘です。
左上は前述したサロンの天井画で、これはクリムトカンパニーによるものです。
右上の写真は次の部屋Kirchensaalで、ミサが行えるように祭壇画コーナーに設置されています。
この空間はかなり広く、1897年までの歴史的背景が展示されています。
祭壇がある部屋を抜けると、Arbeitszimmer・・・いわゆる書斎となり、フランツ・ヨーゼフ1世の空間です。
ここでは1922年までの歴史的背景とエリアべート皇后の非常にモダンな面白い肖像画が飾れています。
その次の部屋は右上の写真で見られるフランツ・ヨーゼフ1世の寝室です。
ここには1976年までの歴史的背景、祈祷台や調度品が展示されています。
興味深いことに上で紹介したエリザベートの寝室はこの空間の正反対にあります。
これはこのヴィラに限ったことではありません。
寝室を抜けるとかつてのトイレ、そこには1984年までのこの歴史、そしてその次が最後の空間で1985~2003年までのこのヘルメスヴィラでの過去特別展示会のポスターなどが展示されています。
ヴィラの正面にはここの名前になっているヘルメスの像が立っています。
これはエリザベート皇后本人からベルリンの彫刻家Ernst Herterに制作依頼したもので、 "Hermes der Wächter"(ヘルメス・デァ・ヴェヒター)と呼ばれています。
Wächterは見張り人とかガードマン、警備員といった意味があります。
ここの中庭は右上の写真に見られるように素敵な空間になっています。
せっかく時間をかけてここまで来たわけですから、このヘルメスヴィラを見学することはもちろんですが、時間をとってこのラインツ動物公園の豊かな自然を堪能して下さい。
天気がいい時に多くの地元の方が訪れています。