詰め込み観光はそれぞれの観光場所でのクオリティーが下がります

最近はとにかくエコノミーなツアーが多く、詰め込み観光が目立ちます。

クリスマス時期には盛沢山の忙しい観光が毎日当たり前のようにありました。

 

日本からの団体ツアーではほぼ100%観光内容が事前に決まっていて、お客様の旅のしおりにもどこを観光するかしっかり書かれています。

それぞれ訪れる観光ポイントはただ単に何処へ行くと書かれているだけでなく、内部観光か、下車してのフォトストップか、もしくは車窓観光かと大きくは3つの可能性があり、それぞれの場所での観光形態が決まっています。
これを守らないとツアーを販売した旅行会社は旅程保証の法律からお客様に変更補償金を支払うことになります。
そのためこのようなツアーの場合は、現地ガイドはどこをどのような形で観光しなければいけないのか、そして決められた時間にそれらが全て終わるように時間を計算して動くわけです。

 

こちらはガイドやドライバーの拘束時間がしっかり決められているので、その決められた時間に入るような常識的なツアーが少なくなり、詰め込みの盛沢山が日常化しているようにも思えます。
旅行販売も競争ですから、詰め込みにしないと売れないのかもしれません。
限られた時間でよりたくさんのものを見る・・・これはお客様にとってはとても魅力的で、ガイドとして当然理解できますし、私もお客様に色々なものを御案内したいです。
しかし・・・冷静に考えてみて下さい!
逆の立場から見れば一箇所に使える時間が限られているわけで当然深くは御案内できないわけですからそれぞれの場所でのガイディングのクオリティーが下がることになるのも事実です。
ボランティアではありませんから、忙しくなっても時間内に終わらせることになります。

例えば3時間~3時間半の半日観光で、シェーンブルン宮殿の後半見学、ベルヴェデーレ宮殿のフォトストップ、リンク道路を車窓観光、もしくはベルヴェデーレ宮殿には行かず市立公園のシュトラウス像や王宮庭園でモーツァルト像のフォトストップなどがオーソドックスでお客様も通常のペースで観光を楽しめます。

 

しかしツアーによってはシェーンブルン宮殿後半、ベルヴェデーレ宮殿の美術館に入場、シュテファン大聖堂のフォトストップ、王宮のフォトストップ、国立オペラ座のフォトストップ、ケルントナー通りを歩く、路面電車の体験乗車、クリスマス市に行く・・・これを全て半日で見るような物凄く忙しいものもあります。

詰め込み過ぎです!!

クリスマス時期にはこのような非常識ツアーが多くあり、いかに時間内で終わらせるかという精神的なストレスでの疲れが溜まってしまいますね。

それぞれの場所に行くのにバスでもそれなりの時間がかかる、また降りてから実際の目的の場所まで歩いて行くのにも時間がかかる、そして旧市街などはバスが入れませんから、当然徒歩のみで観光するわけですから時間がかかる・・・その辺の考慮が全くされていません。

 

拘束時間が決まってますから、観光内容が多ければ多いほど当然急ぐことになるわけで、結果的に「ここはこれだけしか見られないの?」という消化不良と不満をお客様が持たれることも多いでしょう。

でもこれらは現地ガイドや添乗員さんの責任ではありませんから、御不満などはそのようなツアーを企画した会社にハッキリ言って頂きたいと思います。

このようなツアーを組む大半の方は現地事情を全く知りません。

オフィスの中で現地の地図を眺めながら、適当に行けるだろうとか、過去の資料などを引っ張り出して、または別の旅行会社のプランを参考にして決められる・・・そしてパンフレットになって印刷されて一般販売される、ツアーが始まってみたらあまりにも忙し過ぎる、でもパンフレットに載せちゃったのでもう変えられない・・・。(呆れてしまいます)

プランする段階でしっかり考えて頂きたいものです。

詰め込みツアーでもそれに合わせた観光時間が考慮されていればいいわけですが、ただでさえ忙しいのに観光時間はそのままで、クリスマス時期には余計にエキストラでクリスマス市などを組み込んだりと・・・信じられません!

 

営業の数字だけが上がればいいというのはあまりにも無責任すぎます。

旅行業界は皆がビジネスパートナーであり、誰が偉いわけでもなく、それぞれがそれぞれの立場で仕事をし、素晴らしい商品を提供し、お客様に満足して頂く・・・それが基本です。

 

前述したようにバスから降りて目的地まで歩く時間、またバスまで戻る時間や交通状況、平日か休日か、どこまでバスが入れるか、美術館などは目的の絵に行くまでも時間がかかる・・・など様々な要因があります。

なぜ、ツアーを作る段階で添乗員さんや現地にしっかり問い合わせをしないのか理解に苦しみます。

シェーンブルン宮殿、美術館といった大きな博物館的なものを半日に2つも組み込むのが忙し過ぎる原因のひとつです。

博物館に行けば、当然ショップなどを見るためのフリータイムが少しでも必要ですね。

シェーンブルン宮殿内を見学した後、お客様に「ではこれからすぐバスに行きましょう」とは絶対に言えません。

特に美術館は駆け足で回るような所ではありません。

私はプロの国家公認ガイドですから時間の中で全てを回すことはもちろんできます。

しかし、実際にツアーを売られる旅行会社の皆さんがこれだけたくさん半日で見られますがそれぞれの場所での時間は限られていて忙しくなることをちゃんとお客様に説明して販売して頂きたいと思います。

お客様がそのことに納得されていれば、逆にそういうツアーがどんなに忙しくても問題はないのですが、「どうしてこんなに忙しいの、これしか時間が取れないの・・・」と思われるお客様の責任を現地ガイドや添乗員さんが負うことは一切できませんし、負う必要も全くありません。

 

日本の団体旅行はしっかりアレンジされて安心して参加でき、内容も豊富ですしホテルや食事などもある程度のクオリティーがキープされています。

団体旅行は時間の自由性が限られていますが、プロの現地ガイドがアテンドするので、短時間でも中身が濃い観光を楽しめます。

しかし、ツアーを販売する人や企画している方々が現地事情を知らなすぎるという矛盾している実情です。

 

物を買う時に商品を手に取って見たりとか、その商品のことを調べて買いますね?

旅行は商品でも、他の商品のように事前に手に取って見ることができません。

旅行は体験、経験、思い出としての商品ですね。

しかも、時間は取り返しが一切できない貴重なものです。

そのため、パッケージ旅行を選ばれる皆様も訪れる所が決まっているわけですから、逆にどのくらい駆け足になるのか・・・その辺のことも考慮されてみてはいかがでしょうか?

 

 

 

 

 

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