2012年がクリムト生誕150周年記念の年で、クリムトに関係する場所では多くの特別展示がありました。
日本でも年々クリムトファン、もしくはクリムトはどんな絵を描いたのか興味を持つ方が増えていることを実感します。
クリムトと言えば真っ先にベルヴェデーレ宮殿の上宮でしょう。
ここにはクリムトの代表作である接吻を始め、肖像画、風景画が多く見られます。
ベルヴェデーレ宮殿と言えば、観光では写真ストップが当たり前で、入場することはそう多くはありませんでしたが、2012年以降からは頻繁に入場観光するようになって、きつい観光時間でも"接吻"だけは見るということが多くなっています。
そんなクリムトの今年2018年は没後100年であり、それに合わせた特別企画として美術史博物館のクリムトを2回にわたって話題にしたいと思います。
美術史博物館はヨーロッパ3大美術館にも数えられ、絵画史上とても重要な作品が多く見られます。
ハプスブルグ家が所有していたそれぞれの地域での円熟した作品だけを収集したので、いい意味で他の美術館とは全く違ったカラーとなっています。
ここは絵画に興味がない方でも行く価値大です。
素晴らしい絵画を展示するためには、それなりの空間が必要というコンセプトから当時考えられる最高の素材や建築家、芸術家を迎えて建築され、1891年には一般公開されています。
この美術館は14世紀~18世紀、つまりゴシック~ルネッサンス~バロックの絵画を発展しててきた流れの重要所が集まっているわけです。
クリムトはもっと新しい時代ですから彼の作品がここにあるわけではありません。
彼は工房でこの美術史博物館の内装に携さわり、中央大階段ホールのアーチの壁画を手掛けています。
美術史博物館ではこの壁画を近くで見てもらおうと、特設の足場を設けて、クリムトの壁画を目の前で見られるようになっています。
実はこの企画は2012年に最初に行われ、大好評で連日多くの人が訪れましたが、あれから6年経った今年も登場しました。
美術史博物館に大階段ホールを上ると、素晴らしい天井画が目に飛び込んできます。
この正方形空間の後ろ側に足場が組まれていることがすぐわかります。
実際は足場の下を通って階段を上ることになります。
こんな感じで足場が組まれていて、クリムトが描いた壁画をかなり近くから鑑賞できるようになっています。
写真では見られませんが、足場中央奥に特設階段があり、そこからこのスペースに来られます。
この場所は自由に動き回れますが、ここに上がる特設階段は一方通行となっていますので、
写真では向かって左側から上って、右側へ降りて行くという感じです。
こちらは"ローマとヴェネツィアのクワトロチェント"です。
この壁面を正面から見て、一番左側です。
描かれている女性がエクレシアです。
Ecclesia(エクレシア)は、古代ギリシャでは人々の集まりという意味で使われ、そこから転じて信者の集まりを意味し、中世の頃には教会やキリスト教を象徴します。彼女は十字架を持っています。
左の人物はLeonardo Loredan(レオナルド・ロレダン 1436~1521)で、ヴェネツィアの総督です。
前述したエクレシアの反対側に描かれていて、この人物像は、ヴェネツィア派の創始者とも言われるジョバンニ・ベリーニが1501年に描いた彼の肖像画を思い起こさせます。
ローマはローマ教皇がいるローマカトリックの総本山、そのローマに対して色彩が豊かな芸術風景のヴェネツィアがここではテーマになっています。
2人の女性は"古代ギリシャ"です。
古代ギリシャのクラッシック時代は紀元前5世紀が全盛期です。
ここで描写されているのは古代ギリシャアテナイのアクロポリスの上に建設された、アテナイの守護神でギリシャ神話の女神アテナを祭るパルテノン神殿に置かれたアテナ像です。
アテナは智恵と戦争芸術を司る女神です。
左の女性がAthena Promachos(アテナ・プロマコス)、右の立像女性がAthena Parthenos(アテナ・パルテノス)です。
これは両方共Phidas (ペイディアス・・紀元前5世紀終わり)というパルテノン神殿建設の総監督を務めたとされる人物が製作したもので、現在では大理石のコピーしか残されていません。
クリムトは自らの作品にもこの古代ギリシャスタイルをよく用いています。