オーストリアは北海道よりちょっと広い小さな国にもかかわらず、この国がヨーロッパに与えた文化的、歴史的な影響は計り知れないものがあり、そして旅の全ての魅力を持っている美しい国です。
ウィーンを始めとしてオーストリア9つの州、それぞれに個性があり見所が点在しています。
かつての帝国の都ウィーンは荘厳な建造物に囲まれた華やかさと上品さが漂うとても奥が深い街です。
ウィーンの郊外にちょっと足を延ばすとウィーンの森、アルプス山脈に長閑な美しい風景が広がっています。
ウィーン以外にも訪れたい所は星の数ほどありますが、個人的にクレムスの街もお勧めです。
自分が好きな街にもかかわらず、このホームページではクレムスのことをあまり話題にしていないのがなぜか自分でも不思議に思っているのですが、ヴァッハウ渓谷の有名な街デュルンシュタインも素敵ですが、そこよりももっと活気があり、街も大きくて中世の小路などがたくさん残っている情緒ある古い街です。
ここは歩いているだけで楽しいですよ。
今日はこのクレムスの一角にある知られたひとつの建物を話題にします。
スグラフィットはイタリア語のsgraffiare・・・ドイツ語ではkratzen (ひっかく)から由来し、壁などに見られる装飾技法の名称です。
上の写真に見られるように壁に刻まれたような装飾模様が特徴で、平面に描かれているわけではありません。
16世紀のルネッサンス時代にイタリア、ボヘミア地方で特に好まれて用いられた装飾スタイルです。ルネッサンス時代にこのスグラフィットがイタリアで流行っている時に、ルネッサンス時代建築の親方などによってこのオーストリアや現在のドイツにもたらされ、驚きと感動をもって受け入れられました。
スグラフィットは対照的な色の漆喰を2層で塗ります。
1層目は、鉄分や木炭などを含んだ黒とか赤などの漆喰で、その上の2層目は白の漆喰を塗り、その2層目の表面を引っ掻き落とし、1層目の濃い色が現れて模様や絵ができるというものです。
このタイプの素朴な技法はすでに13世紀ぐらいから現在のドイツにあったことが確認されています。
この場所はクレムス旧市街の一角にあるMargarethenstraßeとAlthangasseの間にあります。
この建物は16世紀半ばに市民であるHans Draghが所有していて、このスグラフィット装飾は1553年~1559年に画家であるHans Pruchによるものです。
スグラフィット装飾は視覚的にも独特の効果を与える美しいものです。
クレムスのSteinertorも御覧下さい。