オーストリアで最も訪れる人が多い場所はシェーンブルン宮殿です。
ヨーロッパで重要なバロック建築であり、また世界遺産にも登録されています。
日本からの団体ツアーでは必ずと言って言い程シェーンブルン宮殿を訪れます。
私も仕事柄1日2回シェーンブルン宮殿を御案内することも多く、稀に夕方の貸し切り案内も含めると3回御案内することもあります。
そんなシェーンブルン宮殿には毎年恒例の避難訓練があります。
避難訓練と言っても一般の観光客が対象ではなく、オーストリア国家公認ガイドとシェーンブルン宮殿で働く人達のための避難訓練です。
シェーンブルン宮殿は多い時には一日1万人を超える入場者があります。
(あくまでも宮殿入場だけで、庭園を含めれば倍以上の数になります)
一般公開されている40室は個性あり、大きい部屋もあれば小さい部屋もあり、宮殿内の順路が決まっています。
万が一に備えて国から定められている避難訓練が毎年1月に必ず行われるわけです。
今年は1月9日の18:00から始まりました。
集合場所はシェーンブルン宮殿の大広間です。
一般入場が終わった後ですから、関係者以外は入ることができません。
ここは頻繁に来る仕事場のひとつですので、宮殿で働いている人皆とも顔見知りですし、私にとっては自分の庭のようなものです。
しかしこの避難訓練の時は同僚達がたくさん来るので仕事で来る時とは空気が全く違っています。
入口の所でシェーンブルン宮殿の身分証明を見せて、参加登録します。
シェーンブルン宮殿には独自のライセンスがあり、国家公認ガイドもガイドライセンスとは違うシェーンブルン宮殿が発行しているAusweis (身分証明)を所有しています。
2016年9月からシェーンブルン宮殿は、宮殿内部を案内するにあたっての試験制度を導入し、クオリティーの高さを考え、案内できる人数の制限をしています。
国家公認ガイドであっても、シェーンブルン宮殿の内部を案内するためにはシェーンブルン宮殿のライセンスが必要で、また、シェーンブルン宮殿の見学予約が入っている団体ツアーでも、担当国家ガイドがいないとチケットを発行できないシステムになっています。
個人で国家公認ガイドと観光する場合は、ガイドがシェーンブルン宮殿の予約をできますから問題ありません。
17:45ぐらいに大広間に入ると、すでに多くの同僚達が集まっていました。
多くは顔見知りですから、今年初めて会う同僚には新年の挨拶をして、クリスマスや年末はどうだったかなどの簡単な世間話をします。
この避難訓練は言ってみればオーストリア国家公認ガイド達の新年の顔合わせのようなものです。
今年は例年よりかなり多くの同僚が集まりました。
シェーンブルン宮殿の避難訓練は公には年2回行われますが、今年2回目の訓練は10月16日なので火曜日多くの同僚が来たのかもしれません。
宮殿側から新年の挨拶や2017年度の報告などがあり、その後はあらかじめ決められた宮殿のそれぞれの部屋に行って非常アラームが鳴るまで待機しています。
アラームが聞こえて、館内に放送が流れると同時に、一番近いルートで外に出るという流れです。
シェーンブルン宮殿には常に多くの観光客がいます。
緊急時にパニックにならないよう、ガイドがお客様を最短ルートで外へ避難できるように誘導するわけです。
訓練が終わった後は、宮殿一角で軽食と共にちょっとした歓談会です。
オーストリア国家公認ガイドはウィーンに現時点では約900人いて、全員オーストリアが定めた国家試験をクリアーし、その大部分が個人事業主としてそれぞれのペースで仕事をしています。
そのため、この避難訓練は普段仕事中に街中で会う同僚達のある意味では集まりでもあるわけです。
皆、オーストリア政府の規定による国家試験準備コースを経て、国家試験をクリアーした同僚達ですからひとつの絆のようなものがあるわけです。