アドヴェントの第3日曜日も過ぎて、クリスマスまでいよいよ秒読みとなりました。
今年は12月24日がアドヴェントの第4日曜日となるので、クリスマスの習慣が少し短いのが残念です。
街中にはクリスマスツリーを売る業者が多く見られ、ここぞとばかりに自慢のもみの木をたくさん並べています。
こちらは毎年必ず本物のもみの木を飾ります。
おもちゃのツリーを飾る人はまずいないでしょう。
うちも一昨日の午後にもみの木を買いました。
もみの木はTannenbaum(タンネンバウム)とドイツ語で呼ばれますが、特にこのクリスマスツリーのもみの木は、ここオーストリアではChristbaum(クリストバウム)と呼ばれています。
オーストリアではクリスマスプレゼントを持って来るのはサンタクロースではなくChristkind(クリストキント)ですからね。
背丈が高いものから低いもの、全体の形が整っているものなど様々です。
もみの木にも種類が多くあります。
オーストリアは林業も重要な産業であり、計画的な植林をしているため、もみの木がなくなることは絶対にありません。
毎年時期になると選ばれたもみの木が切られて売られるために運ばれてきます。
うちは毎年家の近くに出る業者からクリスマスツリーを買いますが、その業者はNiederösterreichのWaldviertelに広大な林業地を所有する地元で有名な業者で、家族経営ですがウィーンを始め周辺にいくつかの販売スポットを出しています。
毎年ここで買うのでうちはもう顔を覚えられていて、ちょっとした世間話になります。
この時期が年間を通して一番忙しい時期で、1月6日が過ぎると彼らは休暇に入るそうです。
でもその後、何もしないかというとそうではなく、切り取ったもみの木の根を掘り起こして、新しいもみの木を植える作業が待っていて、さらに成長しているもみの木も当然管理しなければいけないので、
非常に大変だということです。
平均的に植えてから10年前後のもみの木が一番需要があるということです。
そのぐらいのもみの木が普通の家庭に飾る高さに適しているんでしょうね。
上の写真はグラーベンで売られているクリスマスツリーです。
ネットで包まれているのはこれから売られるツリーです。
グラーベンという美しい歩行者天国には、この時期にいくつかのツリーを売る業者が出るので、ツリーが売られているグラーベンはやはりこの時期にしか味わえない空気です。
ツリーはネットに包まれて運ばれ、ネットが外されてKreuzと呼ばれる十字型の木に立てられて売られています。
一番上の左の写真ではKreuzがいくつも置かれているのがわかります。
クリスマスツリーが売られている場所には、左上の写真で見られるように円形の物が必ず置かれています。
クリスマスツリー(もみの木)の形はどれも一緒なので適当に大きさと値段で選んですぐに買う・・・ということにはなりません。
実際に飾ることを思い浮かべて、どのくらい緑が密集しているか、真っすぐであるか、均等であるか、ツリーの先が美しいか、全体のシルエットが美しいか・・・などポイントがいくつもありますので選ぶのは結構時間がかかります。
どれを買うか決めたら、Kreuzが欲しいか欲しくないか聞かれますが、どこの家庭にもたいていKreuzの代わりにクリスマスツリーを支える専用のものがあるので普通はKreuzは要りません。
このままツリーを運ぶのは不便ですし、しかもクリスマスまではまだ時間がありますから緑が乾いてはいけないのでもう一度ネットに包むわけです。
そこで前述した左上の写真に見られるこの円形の物が大活躍をします。
ツリーの根本部分からこの円形の中にツリーを通していくと、狭くなっていく円形の中を通りながらツリーの葉が折りたたまれて、同時にツリーがネットでくるまる・・・という中々便利な物です。
今年はうちで買ったツリーを私がネットで包ませてもらいました。
結構な力が必要でした。
笑いながら、これができればうちで働くことができるよ・・・とも言われました。
ネットで包んだ状態で持ち帰ります。
12月24日にもみの木の葉が緑であることが重要ですから、あまり早く飾ってしまうと乾燥してしまいます。
うちも一昨日買ったネットで包まれたままのツリーが庭のテラスに立てかけてあります。
この時期はクリスマスツリーを持って帰る人の姿が頻繁に見られ、車の上に買ったツリーを乗せて走っている光景もよく見られます。
右上の写真はクリスマスツリーに巻かれているラベルで、品質保証を表します。
この場合は"Niederösterreich"と書かれています。
ラベルに偽りがある場合には10.000ユーロまでの罰金が課せられます。
Niederösterreichはオーストリアでは最も広い州で、ウィーンには約300のクリスマスツリーを売る場所があり、この州からのクリスマスツリーが350.000本も売られます。
<クリスマスツリーを飾る習慣>
11月22日付でクリスマスの習慣について触れています。
その時に現在のクリスマスの原型となった3つの習慣を書きましたが、そのひとつである北欧に住んでいた古代ゲルマン民族の「ユール」という冬至の祭りで使われていたのがもみの木です。
冬でも葉を枯らさずにいる・・・これが生命の象徴とされていました。
こうした「祭りごとを行う時に、もみの木を飾る」という行為は今のドイツにも伝わり、キリスト教の普及と共にキリスト教でもその習慣を引き継いで行きました。
1419年にドイツのフライブルクで、パン職人の信心会が精霊救貧院にツリーを飾ったことが最初の、クリスマスツリーをクリスマスに飾った記録とされています。
常緑樹を飾ったのはなぜでしょうか?
日が短い冬の暗い闇と戦い、闇を追い払うために人々はその時日が短い太陽を元気づけるために火を燃やし、大地のなかの生命が生き続けていることを示すために、冬でも葉を枯らさずにいる、生命のシンボルでもある常緑樹を飾ったということです。
そのような歴史的背景から現在に見られるクリスマスツリーを飾る習慣があるわけです。