うちは新年の夕食の時にウィーンフィルのニューイヤーコンサートを見る習慣があります。と言ってもニューイヤーコンサートが始まるのはウィーン時間の午前中11:15ですから私は毎年、年末から年明けにかけては大晦日や元旦も仕事をしますのでニューイヤーコンサートの時は観光しています。そのため録画しておいたものを夜見るわけですからLIVEで見ているわけではありません。個人的にニューイヤーコンサートはLIVEで見たこともありますが、御存知の通りチケットの値段だって普通のコンサートよりも正規価格でも遥かに高いですからね・・・。毎年11月ぐらいから地元の色々なチケット取り扱い業者から「うちはニューイヤーのチケットが数枚あるから行きたい人がいれば売れますので連絡下さい」というような電話やメッセージが私の所に届きます。でもその時の提示価格は正規価格よりも倍ぐらいの高さになっています。そのような業者ルートから簡単にチケットは入手できますので行く気になれば確実に行けますが、価値観の問題ですからね。2.000ユーロ以上を一枚のチケットに払うか・・・これなら生涯で数回行けば十分という気がします。
ちなみに今年、1月1日の正規価格は1.090ユーロです。
テレビで見るニューイヤーコンサートだっておもしろいですよ。途中に色々な演出があり、会場では見ることができない映像が見られます。
今年のニューイヤーコンサートについての感想を少し書きたいと思います。
今年もニューイヤーコンサートはリンク道路付近を上から見た映像から始まって、シュテファン大聖堂が最初に登場し、カメラが移動してホテルインペリアル、そして楽友協会ホールの建物が映し出され、この正面入り口の扉が開いて視聴者も中に入って行くような演出で始まりました。今年は話題性たっぷりのGustavo Dudamel(グスターヴォ・ドゥダメル)というベネズエラ出身の指揮者で、彼は35歳、ニューイヤーコンサートの歴史では一番若い指揮者ということになります。今年の最初の曲はフランツ・レハールのオペレッタ 「ウィーンの女たち」からネヒレディル行進曲から始まって、Emile Waldteufel、ヨハン・シュトラウスと続ていきました。グスターヴォのエネルギッシュでなおかつ自然な音楽性がウィーンフィルと見事に一体化して素晴らしいハーモニーを生み出しました。これは会場で実際に聞いた方は良かったでしょうね。
ニューイヤーコンサートはガチガチのクラシック音楽ではなく、シュトラウスなどのワルツやポルカなどの明るい曲が多く演奏されます。ウィーンの国立オペラ座だって大晦日と元旦はシュトラウスのこうもりです。今年は黄金の間に飾られる花がとてもカラフルで、色々な色の花が飾られていて、パイナップルまでも置かれていました。
カメラも天井や横に設置されていて演奏中は楽友協会の黄金の間の細かい内装装飾などが映像でも登場します。
前半のシュトラウスのポルカ0p.291の時にはウィーンの街のマリア・テレジア像、美術史博物館、王宮、シェーンブルン宮殿に見られるマリア・テレジア一家の肖像画、シェーンブルン宮殿、また宮殿内の家族的セレモニーの間、シェーンブルン宮殿の庭園、Theresianische Akademieの図書館などが登場しました。
休憩時間の恒例な演出は今年はシュテファン大聖堂の塔の上とその周辺の眺めから始まり、大聖堂の石職人、料理人(ここはシュタイラーエックが登場)、御者、庭師、石畳の職人、靴職人、指輪職人、画家が登場し、「ウィーンのリズム」というタイトルで、4人の女性チェロリストのアンサンブルの調べにのってそれぞれの仕事の風景が演出されていました。この時はもちろんウィーンの街での撮影なので、ウィーンの色々な場所が登場しました。
後半カール・ミヒャエル・ツィーラーの曲ではウィーンのラインツ動物公園にあるヘルメス・ヴィラが登場し、ヴィラの中や庭園での素晴らしいバレエが披露されました。
また、別の曲ではスペイン乗馬学校の白馬達が飼育されているピーバーも登場したこともおもしろかったです。
エリート達の走る様子や生まれてすぐの立ち上がる様子などが紹介されました。
もちろんウィーンの王宮の乗馬ホールでの映像やルネッサンス様式が美しいStallburgも登場しました。
終わりに近いシュトラウスのAuf zum Tanze! Polka schnell op.436では会場にバレエ団が入って来るという演出で実際に見ていた人も楽しかったと思います。この曲が始まった直後、彼らは黄金の間の外ですでに踊り始めていて、じれったくなって会場に乱入した・・・ような演出となっていました。
シュトラウスのTik-TakPolka op.365ではウィーンの時計博物館が登場しました。
恒例の美しき青きドナウでの今年の演出は、過去のバレエの映像が万華鏡のように登場しました。この中には2012年のベルヴェデーレ宮殿での模様も多く見られました。
最後はもちろんラデツキー行進曲です。
今年のニューイヤーはお茶の間への映像がかなり多かった印象で、内容的にも素晴らしかったと思います。
今までの歴史の中で一番の若手指揮者でしたが、ウィーンフィルとの見事な一体感でした。
ウィーンフィルのニューイヤーコンサートが行われる場所は楽友協会の黄金の間です。
このホールは世界で最も音響がいいホールのひとつで、ウィーンフィルの本拠地となっていて、私も年間を通してよくこのホールの中を御案内をしていますが、ニューイヤーコンサートの時は花が飾られ綺麗に装飾されますから普段とは全く違います。
ニューイヤーコンサートは3回あるということはあまり知られていないようですね。
12月30日、31日、1月1日の3日間で、3日間とも同じ顔触れで同じ内容で行われますが、1月1日だけは世界に生中継で、また他の2日間から比べればチケットも高くなっています。
ウィーンフィルのニューイヤーコンサートの始まりはクレメンス・クラウスの指揮で、1939年の大晦日でした。
つまりニューイヤーコンサートではなかったわけです。
しかし、次の年1940年大晦日と翌日1941年1月1日と2日続けてコンサートが行われ、その時からニューイヤーコンサートが始まったというわけです。