オーストリアは歴史的に奥が深く美しい国です。ウィーンを含め9つの州で成り立っていますがそれぞれの州には個性があり、国内全土に見所が点在しています。ガイドブックで必ず紹介されている観光で有名な所もあれば、ガイドブックなんかには載っていないけど地元では有名な場所がたくさんあります。
私は仕事では様々な御案内を皆様にしているわけですが、プライベートでも時間があれば家族で色々な所に出かけています。今日は日本のガイドブックにはまず紹介されていない、しかしこちらでは有名な場所のひとつを3回に分けてまとめてみます。
その場所とはAmethyst Welt MAISSAU (アメジストの世界)です。
Amethyst Welt Maissauはウィーン中心部から車で70㎞程北西に走った"Maissau"にあり、世界最大のアメジストが埋まった岩の壁が見られます。MaissauはNiederöstereichのWeinviertelとWaldviertelの中間に位置した人口2.000人弱の小さな街で、Amethyst Weltはそこから2km程離れた所にあります。
右の写真はここの案内図で、下に見えるドームのような所が入口で、中はインフォメーション、ショップやカフェなどがあります。自然の中にテーマを持ったいくつものスポットがありますが、ここの最も重要な場所はインフォメーションのすぐ上にある円形の建物で
"Amethyst-Schaustollen"と呼ばれ、世界最大のアメジストが埋まった岩壁があります。
このAmethyst WeltのAmethyst-Schaustollenはガイドツアーのみでの見学が可能です。普段は皆様に御案内している立場の私ですが、ここではもちろんガイドツアーに参加しました。後で触れますがここはアメジストを発掘することができるので地元の子供達にもとても人気があるスポットとなっています。この日も家族連れの方々が多く来ていました。
Amethyst-Shaustollenに入ると広い円形スペースの中央に写真で見られる3角形状の大きなスクリーンが設置されていて、アメジストについての説明を見ることができます。Amethyst-Schaustollenはアメジスト見学坑道なんて意味になるでしょうか。
アメジストは紫水晶とも呼ばれていて紫の色が有名ですね。アメジストという名はギリシャ神話に登場する少女の名前から来ています。アメジストは意外と古い歴史を持っていて今から約4.000年前のエジプト王、王妃のお墓の中からも発見されています。
アメジストは水晶ですから天然水晶と同じマグマ性結晶で火成岩に分類されます。
美しい紫色は水晶を形成する珪素の一部が鉄に入れ代わり、鉄を取り囲む酸素のひとつの電子が天然放射線によって失われて形成されると言われています。
この空間にはエジプト時代や中世の頃に身分の高い人が身に着けるけていたアメジストが展示されています。
左はイギリス王女Jane Seymourが身に着けていたもので、ウィーンの美術史博物館にハンス・ホルバイン(子)が描いた絵でも確認することができます。ハプスブルグ家の皇帝ルドルフ2世も登場します。
さらに奥に入って行くと左上の写真のようにとても広い空間に導かれます。ここには多くのアメジストが展示品として置かれていて、右側には世界最大のアメジストが埋まった岩壁が姿を現しました。まるで人工的に作った映画のセットのようですが、自然のままに残されていて、そこを利用してこの施設を作ったわけです。
右上の写真はこのAmethyst Weltの岩壁がどのくらい長くて、どこに位置しているかの図ですが、左がMaissauの街で、紫の濃く塗られた部分の一角にこの場所があります。確実に400mの長さはあり、おそらく1km以上はあるだろうと推定されています。この場所は地下12mの深さで、ここに見られるアメジストの岩壁は40m以上の長さがあります。すごいの一言です。
この岩肌の随所にアメジストを見ることができます。上の2枚の写真はここの照明のおかげで紫が薄いですが、
実際はかなり濃い色をしています。
このMaissauで発掘されたアメジストの岩の塊がいくつも展示されています。
紫水晶が至る所に入っています。
このAmethyst-Schaustollenのガイドツアーはだいたい1時間ぐらいで、アメジストの歴史的な背景や自然の中でどのように形成されていくのか、またアメジストの意味などを知ることができます。
うちが最初にここに来た時はここの一番重要なこの場所のガイドツアーから始めましたが、この後まだもうひとつのガイドツアーがありますが、この続きは明日にします。