年間を通して美術史博物館は頻繁に訪れます。
パッケージツアーの皆様との全日観光の場合は午前中にシェーンブルン宮殿を観光し、昼食を食べた後、午後ここに来ることが多いです。
またよくお茶とケーキを組み合わせたオプショナルツアーで入ることも多いです。
観光終了がこの美術史博物館であることも多いです。
絵画の質から言ってヨーロッパ三大美術館のひつとに数えられているぐらい、絵画史上重要な作品を多く見ることができます。
今日は久しぶりにここの絵画を一枚話題にしましょう。
こちらはアルブレヒト・デューラーの聖三位一体祭壇で、ランダウアー祭壇とも呼ばれています。
ランダウアーとはニュルンベルクの豪商で「十二兄弟の家」の創立者マテウス・ランダウアーで、彼は1508年にデューラーにこの祭壇画制作を依頼しました。
この絵が飾られる礼拝堂は三位一体と全ての聖人に捧げられているので、その目的に叶うようにこのような構図になりました。
全ての聖人と信徒達によって聖三位一体が讃えられる内容となっています。
中央にいる王様のような人物が神で、虹の玉座にいます。
その前には十字架のイエス・キリスト、そして神の上には(見にくいですが)精霊の鳩が描かれています。
その聖三位一体を取り囲むかのように天使や聖人、信徒達が描かれています。
聖三位一体に最も近い所には翼をつけた頭だけの天使がいます。
それに続いて受難の道具を持つ天使が描かれています。
キリストの右側には旧約聖書の首長、預言者、列王が描かれていて、中でもモーゼ、ダヴィデ王、洗礼者ヨハネが目立ちます。
キリストの左側には聖母マリア、バルバラ、カタリーナ、ドロテア、アグネスといった聖女がそれぞれのアトリビュートと共に描かれています。
聖母マリアは洗礼者ヨハネと平行する位置に描かれています。
その下の大きな人物像は最後の審判を通過した信徒た達が描かれています。
右側は平信徒のキリスト教集団、左側は聖職者達が表されています。
聖職者集団の中にいる毛皮の縁飾りのついたコートを着ている白髪の人物がランダウアー本人と言われています。
そして一番下には現実の世界が描かれ、その一番右側には製作者デューラー本人が登場しています。
アルブレヒト・デューラーが学んだイタリア絵画の伝統や技法がこの祭壇画に重要な役割を果たしています。
ゴシック様式の伝統的な三連祭壇画スタイルではなく、イタリア様式に見られる絵画と枠組みを組み合わせた全体でひとつの作品という構想です。("最後の審判"が一番上に来ている)
このルネッサンス様式の枠組みも素敵です。
色彩もヴェネツィア派を思わせるものがあります。
アルブレヒト・デューラーは1471年、ニュルンベルクで生まれた現ドイツの画家で、版画家でも美術理論家でもあります。金細工師であった父から様々なものを学んでいます。
1494年ヴェネツィアに旅行し、ルネッサンス美術を研究しています。
1945年には帰国し、工房活動をし、まもなく全ヨーロッパ中に知られるようになります。
ドイツゴシックをルネッサンスに持っていった重要な画家で、イタリアにも大きな影響を与えることになります。