知られざる美しい中庭風景と言うタイトルでは基本的に毎月一回どこかの中庭風景について書いています。
外からは全くわからない隠れた美しい空間に入った時には一瞬時が止まります。
前回の知られざる美しい中庭風景 32ではウィーン旧市街のルネッサンスの中庭とウィーン大学のやはり美しいルネッサンス様式の中庭を紹介しました。
今回は旧市街地からひとつと外側からひとつ取り上げます。
こちらは旧市街の一角にあるかなり広い中庭です。
公道から入ってすぐにこの中庭があるわけではなく、
細い通路をさらに奥に行くとこの中庭が見られます。
木が植えられていてその緑の葉が自然を感じさせ、この空間に素晴らしいアクセントを与えています。
その周りにはくつろげるようになっているベンチも置かれています。
でもここはもちろん公園ではありません。
この場所はウィーン1区 Johannesgasse 15番地にある歴史的に重要なSavoyensches Damenstift(サボイの女性修道会)の建物です。
この建物は1688年に昔からあった2つの建物をひとつにして18世紀の1742年に、プリンツ・オイゲン公の甥であるPrinz Thomas Emanuel von Savoyen-Carignanの未亡人Maria Theresia Anna Felicitas Herzogin von Savoyen-Carignanに売却された宮殿でした。
彼女は遺言にここを貴族の女性修道会にするよう記し、彼女が亡くなった後1772年に修道院に改築されました。
マリア・テレジアがその後ここを認可しました。
ここには15歳~40歳までの女性が生活し、出かけることも旅行も許されましたが、結婚はできませんでした。
現在ここはリヒテンシュタインの所有となっています。
こちらは中庭というにはあまりにも大きすぎる空間ですが、外からは見えない空間ということでここに取り上げてみました。
並木の奥の方に黄色い宮殿が見えていますね。
そうです、ここはシェーンブルン宮殿の庭園です。
個人旅行で時間がある方は別として、普通はこの角度からシェーンブルン宮殿を見ることはあまりないでしょう。
宮殿の背景に見られる山はウィーンの森です。
シェーンブルン宮殿の庭園はフランス式庭園で、幾何学的模様が特徴で、宮殿が一直線上に見渡せる場所がいくつかあります。
庭園ですから"中庭"という雰囲気はありませんが、
"庭"であることには変わりません。
ウィーンの街には(実際にはオーストリアのどこの街もそうですが)外からでは気付かない魅力的な中庭空間が数え切れない程存在しています。