オーストリアはドイツ語が公用語として話されています。
年間を通して仕事をしていると、日本のお客様から「オーストリアは"オーストリア語"ですか?」という質問をする方がまれにいらっしゃいます。
ドイツ語という言葉が、オーストリアの隣の現在では大きなドイツという国だけで話されているイメージがあるからでしょうかね・・・。
ドイツ語は難しい言語のひとつに数えられていますが、確かに英語と比べると文法は遥かにややこしいです。
名詞には男性、女性、中性の3つがあり、冠詞、不定冠詞、形容詞などがそれに合わせて変化し、4つの格があり、前置詞にも格支配があってとにかくややこしいです。
ドイツ語をやり始めてから多くの人が冠詞の変化で挫折することをよく聞きます。
日本語にある"敬語"という次元はドイツ語には区別されていませんが、ドイツ語にも当然のことながら親しい間柄で使うフォーム、見知らぬ人や年上の人達に使うフォームや丁寧な表現などは存在しています。
それを本当に単純に分けるとすれば"SIE"と"DU"でしょう。
"SIE" (ズィー・・・オーストリアだと"S"は濁らない習慣があるのでスィーとよく言われる)は"あなた"という意味で見知らぬ人や年上に使われる尊敬的な意味を持つ主語です。
それに対して"DU(ドゥー)は"お前"ですから、家族、友達、知り合いと言った親しい間柄で使われる主語です。
小さい頃や生まれながらにしてドイツ語に親しんでいる人は別として、ある程度の年齢からドイツ語を習い始める場合はおそらく"SIE"フォームから始まります。
私も東京での社会人時代にウィーンに住む目的があったので徹底的にドイツ語を勉強しましたが、ドイツ語学校などでは"SIE"フォームから始まりました。
SIEフォームは後に来る動詞が変化しないため、つまり動詞を原型で使用できるので理解し易いということだと思います。
"DU"の場合は動詞が変化し、命令形の表現も違ってきます。
例えば"fahren" (ファーレン・・・車や乗り物を使用して行く)という単語の場合は
Sie fahrenですがDu fährstとなります。
ウムラウトまでがついて、なおかつ語尾が変化していますので、ドイツ語を外国語として勉強する人にとってはちょっとつむじ曲がり的な変化というわけです。
しかし日常生活の中では圧倒的にDUフォームが多く使われます。
家族や学校での友達、仕事での同僚など全て"DU"です。
最初距離があったりする人が徐々に親しくなってくる時や、目上の人からDUフォームにしましょう・・・と言われたら・・・つまり今までSIEフォームで会話していた方々とDUフォームになる時には、お互いに名前(苗字ではありません)を言って握手をする、ちょっとした自己紹介的な習慣があります。
DUフォームになるとその人とはずっと身近な感じになりますね。
日本で通っていたドイツ語学校の先生が「本当はDUフォームの方が簡単で、現地に住んだら絶対にDUフォームの方が多く使われるよ」と言っていました。
確かにその通りで、ドイツ語会話に慣れて来ると、DUフォームの方が言い易いんですね。
逆にSIEフォームの時に気を使うというちょっと丁寧な感覚があります。
小学校の子供達もクラス内も当然ですが先生ともDUフォームです。
日本とはやっぱり違います。
それはこちらで生まれた子供達は家族の中ではずっとDUフォームで大きくなってきたわけですから、幼稚園が終わり、小学校に入ってもDUフォームが普通に続いていくわけです。
その途中に丁寧な表現としてSIEフォームを習うわけです。
そのため、ドイツ語を母国語にする人にとってはSIEフォームの方が言いにくい、難しい、めんどうくさい・・・という感覚があります。
この感覚は本当に理解できます。
日本語だってそうです。
私達日本語を母国語にする人が、いきなり敬語からは入りませんね。
また家族内で丁寧語で話すことは普通はないと思います。