キリスト教関係の大事な習慣にFasching (ファッシング)・・・謝肉祭がありますね。
謝肉祭はカーニバルと日本でも言われることもありますが、中世ラテン語のcarne levare (ドイツ語ではFleisch wegnehmen・・・直訳で肉を取り上げる)から来ているという説が一般的だと思いますが、冬を追い払って春の到来を祝う古代ゲルマン民族の習慣に由来し
その農耕祭で船を仮装した山車carrus navalis(車・船の意)を由来とする説なども
あるようです。
謝肉祭はイエス・キリストが磔になり、そして復活するまでの厳粛な時がやってくるので
それに伴って断食を・・・その前にバカ騒ぎをしようじゃないか・・・という意味があるわけです。
場所によっては昨日の11月11日11時11分から謝肉祭が始まるという習慣もありますが、
これは19世紀以降に生まれた習慣です。
実際に生活をしていると1月6日の聖三王の日が過ぎるまではあまり謝肉祭という雰囲気にはなりません。
昨日の朝仕事に行く時に、KarlsplatzのOpernpassgaeを歩いていたら、正面の方から
女性が大きな声で何か言っているのが聞こえて来ました。
最初は何だろう・・・と思いながら近づいていくとAnker (パン屋さん)の店員さんだったのです。
「できたてのFaschingskrapfenがありますよ!皆さんいかがですか~」と大きな声で宣伝していたのです。
Krapfenとは日本的に言えばドーナッツですが、真ん中に穴が空いている定番なドーナッツとは違っています。
むしろ形的にはあんドーナッツに近いのではないでしょうか?
"Faschingskrapfen"ですから
謝肉祭ドーナッツとなるわけで、名前の通り謝肉祭時期に食べるものということですね。
私はちょっと店員さんの方へ近づいて、売られているFaschingskrapfenを見ました。
とてもおいしそうで思わず買おうかと思ったのですが、仕事に行く途中ということもあり、
後で寄ります、と言って別れました。
店員さんと話をしている最中にそう言えば今日は11月11日だったということを思い出しました。
"Krapfen"はこちらでは誰でも知っているもので、特に謝肉祭時期に多く売られます。
Krapfen(クラプフェン)という名前はほぼ中世の頃から来たというのが定説で、当時は今のKipferl(いわゆるクロワッサン)の形をしたものがありました。
これを当時Krallenとも呼ばれ、Krallenは"かぎづめ"という意味があります。
このKralleが当時"Chrapho" とか "Krapfe" という呼び方をされていました。
この形は寒い時期に悪い魔女や幽霊から人間を守るための意味がありました。
しかし、どの地域からどのようにして一番最初のKrapfenが生まれたかはハッキリとはしていませんが、いくつかの説があります。
①
古代エジプトでは油の中に浮かせたパンを作ったこと。古代エジプトのあるお墓から Krapfenに非常によく似たものが見つかっています。
②
古代ローマ人も "Globuli" という名で揚げパンを作り、それを蜂蜜といっしょに食べたようです。
③
1200年頃に修道院でも"graphos"という名の揚げパンが存在しています。
④
このウィーンという街から始まったという説も存在しています。
Cäcilie Krapfというパン屋さんが17世紀の終わり(1690年頃)、 "Cillikugeln"という
フルーツを入れたパンを製造した・・・彼女は怒りから自分の教科書に生地を投げつけた・・・でもこれがシュマルツ(動物性脂肪を融かして精製した食用油)の中に入ってしまたということです。
つまり偶然に起こったということですね。
このKrapfenは当時お金がない人々にも安くてある程度の栄養もあったので大変好まれていました。
宗教的に甘いパンは謝肉祭の後の四旬節の時にエネルギーを蓄えるもとして謝肉祭の時には特に推奨されました。
そこから"Faschingskrapfen"と呼ばれています。
Krapfenの定番は杏子のジャム(Marillenmarmelade)が入っているものですが、バニラクリームやイチゴのジャムが入っているものも売られています。
この写真では左が杏子のもので、右がバニラクリームのものです。
確かに揚げパンに似ていますが、ザラメがついているわけではなく、粉上の砂糖が振り掛けられています。
揚げパンのように表面がサクッとはしていません。
スーパーやパン屋さんなどでは必ずと言っていいほど売られていますよ。
是非ひとつ食べてみてはいかがでしょうか。