最近また頻繁に美術史博物館やベルヴェデーレ宮殿のオーストリアギャラリーを案内することが続いています。年間を通して日本からの様々なツアーをアテンドさせて頂いておりますが、観光内容はそれぞれのツアーで全く違っています。
ある週は全く美術史博物館に行かない時もあれば、逆に毎日入場観光することもあります。
仕事でしょっちゅう行く美術館ですが、ちょっとした空き時間がある時にも個人的に
美術史博物館はよく行ってます。例えば次の仕事まで1時間、時間があると思ったら、
ちょこちょこっと美術史博物館に行って、30分だけルーベンスを見て来よう・・・
なんて贅沢なことをよくやっています。
仕事で絵画を案内する時と1人で観賞する時とは全く違います。
さて、前回その美術史博物館のティントレットについて少し触れました。
ヴェネツイア派は個人的に大好きですが、今日の画家ルーベンスも大好きです。
これは1615年頃描かれたルーベンスの"四大陸"というタイトルで、私はウィーンに住む前の学生時代に東京の西洋美術館でこの絵を見たことがあり、大変に印象に残っていました。
これは男女のカップルがそれぞれの大陸とそこを流れる河を表しています。
男性は河の神を表し、女性は女神を表しています。
ヨーロッパとドナウ河、アジアとガンジス川(チグリス河と言う説もあります)、
アフリカとナイル川、アメリカとアマゾン河の4つの大陸と河です。
画面左上の男女がヨーロッパ、すぐその下がアフリカ、右から2番目がアメリカで一番右がアジアを象徴しています。
当時はユーラシアではなく、ヨーロッパとアジアが2つの大陸と考えられていました。
オーストラリアももちろんまだ知られていませんからここにはないわけです。
17世紀になると簡略化された地図が描き始められ、よく大陸は擬人化されました。
その大陸・・・いわゆる地球に全ての生命がある・・・そこで人間だけではなく、
陸の生き物や水の生き物なども描かれていることがわかります。
生命の象徴的なこの大胆な絵はルーベンスの特徴が見事に発揮された1枚でもあります。
ルーベンスは1577年に現ドイツのジーゲンで、アントワープ出身の資産家の息子として生まれ、21歳でアントワープの画家組合に加入しています。
23歳からイタリアで8年間滞在し、古代彫刻の力強さやミケランジェロを研究し、ヴェネツィア派の美しい色彩を学び、それを融合した華麗なフランドルバロックの世界を展開しました。
イタリアから帰国し、ハプスブルグ家オランダ摂政王のアルブレヒト大公とイザベラ大公女の宮廷画家でもあり、7か国語を駆使できたと言われるルーベンスは外交使節などでも活躍し、アントワープに定住します。
この写真はアントワープにあるルーベンスの家です。
この街で1640年に亡くなりました。
豊かな色彩、官能的で健康な人物表現などや大画面が特徴で、とてもドラマチックな作品が多いです。