ウィーンの王宮一角にある宝物館(Schatzkammer)は伝統を持った歴史的に興味深い物が数えきれないほど展示されています。
ヨーロッパで一番長く続いたハプスブルグ王朝の、そしてそのハプスブルグ家にかなりの時代にわたって神聖ローマ帝国の皇帝やローマ王の称号が置かれていましたからこのような独特の素晴らしい博物館があるわけです。
オーストリア帝国帝冠や神聖ローマ帝国の帝冠、2680カラットのエメラルドなどをすでに紹介しています。
さて、今日は無敵の力が備わっているといわれる聖槍について少し書きたいと思います。
この聖槍は、おそらく774年にハドリアヌス1世ローマ教皇が
カール大帝に贈ったと考えられています。
つまりカロリング朝時代です。
長さ50.7cmで、銅、鉄、真鍮、金、皮革が使用されています。
槍の中央部分にはイエス・キリストが磔になった時に使用された釘が据え込まれているとされています。
11世紀には実際に十字架に使用された釘と見なされていて、
13世紀にはロンギヌスがキリストの脇腹を刺した聖槍ということになったようです。
金が巻かれたのは14世紀で、カレル4世の時代です。
「主の槍と釘」という銘が刻まれています。
槍の中の釘は真鍮製で、でこぼこのような形をしていて、十字架が施されていることがわかります。
955年のレヒフェルトの戦いで、マジャール民族をオットー1世が破った時も、この聖槍の力によるものとされています。
オットー時代には王者の統治と力を示すシンボルであり、無敵の力が備わっているとされました。
キリスト教を公認したコンスタンティヌス帝に倣って、権力の象徴を受け渡すことによって、古代ローマ帝国とその後800年カール大帝から始まる神聖ローマ帝国を結びつようとする意図に基づいていたようです。
アドルフ・ヒトラーの野望がこの聖槍と結びついている話も有名ですね。
ヒトラーをこの聖槍をドイツに持ち去ることになります。
実際に聖槍はいくつか世界に存在していますが、このウィーンの宝物館に置かれている聖槍こそもっとも由緒正しい物とされています。
さぁ~、宝物館に行ったら見逃さずじっくり観察して下さい!