ここ最近は美術史博物館を案内する日が結構続いています。
ウィーンに来るツアーでは圧倒的にシェーンブルン宮殿が多く含まれていますが、
全日観光などでは午後に美術史博物館に行くことも多く、またオプショナルツアーとして
美術史博物館をメインテーマにすることも頻繁にあります。
個人的に美術史博物館は大好きで、ハプスブルグ家の素晴らしいコレクションは他の美術館
にはない、独特の個性を持ち、絵画史上重要な作品だけが集められています。
最近このブログコーナーで絵画の話題から遠ざかっていたので、今日はちょっと絵画について書いてみる気になりました。
だいぶ前に色彩が美しいヴェネツィア派というタイトルで書きましたが、そこでちらっと
登場したティントレットの知られたひとつを見てみましょう。
これは"スザンナの水浴"で、絵画によく登場する旧約聖書からの話です。
裕福なユダヤ人の妻スザンナは庭で沐浴するのを日課としていました。
それを知っていた長老は、彼女がひとりになった時に言い寄って自分達と関係を持たなければ、若い男性と関係していると言いふらす・・・と脅しました。
潔白である彼女はそんなことは当然拒否しました。
長老達は言ったことをを実行し、スザンナの夫の耳にも入ります。
そこで彼女は姦淫の罪ということで死刑の宣告を受けることになります。
預言者ダニエルが2人の長老を別々に尋問し、矛盾を引き出すことに成功します。
そこでスザンナの無実が証明されるというお話です。
この主題は初期キリスト教迫害時代の人々に支持されて、カタコンベや石棺などによく描かれました。
16世紀以降は特に女性の裸体を描くいい口実にもなりました。
女性の裸体は美しく、誰もが描きたかったにもかかわらず、裸体をむやみに描くことはできなかったからです。
光と影、遠い物と近い物、女性の美しさと男性のしょうもない醜さ、穏やかな空気とこれから襲われるという危険など様々なコントラストが見られます。
ティントレットは(1518~1594)はヴェネツィアで生まれ、ヴェネツィアで亡くなった画家で、父親が染物屋であったことから染物屋の子(ティントレット)と言われます。
彼は27歳の時にローマにも赴き、ミケランジェロを模倣した多くの素描を描いています。
40歳半ばからはヴェネツィア派巨匠のティツィアーノの影響を受けた肉感的な美しい絵が多くなります。
少し後のエル・グレコ(1541~1614)の作品を予想させる、視点にも特徴があり、光と影の鮮明なコントラスが特徴的です。
ヴェネツィアにはティントレットの作品がたくさんあります。