オーストリア国家条約 60周年記念

今日5月15日はこのオーストリアにとってとても重要な日です。

それは1955年5月15日にオーストリアは待ちに待った4ヶ国占領時代から解放される

国家条約が結ばれた日であるからです。

 

オーストリアは永世中立国です。

ヨーロッパで一番長く続いたハプスブルグ家の帝国時代最後の皇帝カール1世が、シェーンブルン宮殿で一切の事から手を引く・・・と宣言したのは1918年11月11日でした。

その翌日の12日にはドイツオーストリア民主主義共和国が手回しよく生まれています。

1919年10月21日からはオーストリア共和国という現在の呼び名になります。

 

その後オーストリアファシズムがあって、1938年にヒトラーの最初の犠牲国となった

オーストリアは地図上から消え、第2次世界大戦に巻き込まれて敗国となりました。

1945年から連合軍(アメリカ、イギリス、フランス、旧ソ連)に占領され、オーストリアは

分割統治をされることになります。

 

その後紆余曲折しながら、10年間の占領時代を終えて、今日のテーマである国家条約が

ベルヴェデーレ宮殿の大理石の間で結ばれました。

 

参考までに・・・

10月26日 オーストリア共和国の祝日

オーストリア共和国の祝日

                           も是非御覧下さい。

 

 

現在ベルヴェデーレ宮殿の上宮にある大理石の間には国家条約が結ばれた60周年記念の特別展示が見られます。

 

写真に見られるように椅子とテーブルが並べられています。

これは国家条約が結ばれたその当時を再現しています。

 

中央階段からここに入ると正面窓側にこちらを向いて並べられています。

 

 

 

この占領時代10年間はとても長かったわけで、地元の人々はオーストリアが独立できる希望を失いつつありました。

 

終戦の年の1945年、ソ連が一番最初に東側からオーストリアに到着し、残り3国が後からやってきました。そのため必然的にソ連の力が強かったわけです。

オーストリアにはソ連がバックについた暫定内閣が生まれてしまいます。

 

ソ連は共産主義という名目で、チェコ、スロバキア、ハンガリー、ブルガリア、ルーマニア、ポーランド、ドイツの東とベルリンの東、そしてかつてのユーゴスラビアを支配します。この時にオーストリアもドイツ同様分断され、ウィーンもベルリン同様「壁」が築かれる可能性がありました。

 

オーストリアはドイツに併合されたため地図上から消された・・・つまりソ連側からすればドイツと戦ったわけなので、戦争の非はドイツであるからオーストリアの物でもドイツの物と見なされたわけで、ソ連は様々な物をドイツから(実際はオーストリアから)持って行きました。そのような物を取り返す必要があったりと、複雑な状況だったので交渉が大変に難航したわけです。連合国3国とソ連の関係も決してよくありませんでした。

 

当時の政治家達の努力が実り、ついにオーストリアは共産圏に組み込まれることはなく、4か国占領時代に別れを告げる国家条約が60年前の今日、結ばれました。

 

この時に、ソ連のモロトフ外相、アメリカのダレス国務長官、イギリスのマクミラン外相、フランスのピネー外相、オーストリアのフィーグル外相が集まりました。

 

 

 

 


 

写真左は国家条約調印式で、当時の写真で、同じ位置に椅子が並べられています。

右の写真は調印書のファクシミリで、各国のサインを見ることができます。

この国家調印書がオーストリア2ユーロの記念硬貨のひとつになっています。

 



左上の写真は地元で有名な光景で、サインをした後の国家調印書を当時のフィーグル外相が

ベルヴェデーレ宮殿の2階のバルコニーから皆さんに見せているシーンです。

右側の写真はベルヴェデーレ宮殿に当時集まっていた人々で、皆さんがこの瞬間を本当に

待ち望み、喜びに満ち溢れていることがわかります。




 

仕事でこのベルヴェデーレ宮殿はしょっちゅう行きます。

今現在ではとてもそんなドラマがあったとは思えない、美しい宮殿と庭園が当時としかし同じたたずまいで見ることができ、地元の人から観光客の皆さんまで人気のある場所です。

 

ベルヴェデーレ宮殿の上宮を正面から見ると、前述したオーストリア共和国の祝日でも

紹介した、オーストリアの国旗が常に掲げられています。

この国旗にはこの重要な意味を持っていました。

 

私個人的にはここに来ると、現在のオーストリアの基本がここから出発したというこの歴史的事実をいつも感じます。

 

 

 

 

 

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