ウィーンの街には様々な教会が建っています。
それぞれの教会は個性があり、様々な様式が見られますが、しかしキリスト教というひとつの培われてきた伝統の上に存続しているという共通性を持っています。
教会をぶらぶら見ているだけでも楽しい街歩きができます。
このコーナーでも思いつきで色々な教会話題にしていますが、この教会も素敵な空間を楽しめます。
こちらは少しルネッサンス的要素を感じられる美しいバロック様式の正面が印象的なドミニコ会の教会です。
ドミニコ会は、1216年にスペイン出身でイタリアで亡くなる聖ドミニコによってフランス南西部のトゥールーズにローマ教会から認められて設立されました。
ウィーンにはバーベンベルク王朝時代の君主レオポルド6世によって、1226年に呼ばれてきます。
伝説によれば、このレオポルド6世は南フランスのアルビジョア十字軍に参戦した時に、個人的に聖ドミニコと知り合いになったということです。
このレオポルド6世はフランシスコ会のおおもとであるミノリーテンをその2年前の1224年には呼んでいます。
修道院と接続された小さなロマネスク様式の礼拝堂は1237年には作られていましたが、その後1283年の火災により焼失し、ゴシック様式での再建が行われ、1302年には内陣が完成し奉納されています。
1529年のオスマントルコの脅威により教会の大部分が壊され、その資材がウィーンの城壁を強化するために利用されました。
1631年の皇帝フェルディナント2世により、礎石が置かれ、その3年後の1634年に献堂されましたが、まだ教会の骨組みだけだったので、その後1674年までに正面装飾やドームなどが作られていきました。
ウィーンでの代表的な初期バロック様式です。
教会の正面にはドミニコ会に属した聖人達が立っています。
内部は長さ約47m,幅21m,高さ22mのかなり広い空間で、素晴らしい バロック装飾を見ることができます。
内部装飾はイタリア出身者によるもので細かいことはわかっていませんが、アイゼンシュタットのエスターハーズィ宮殿のハイドンザールの天井画を手掛けたカルポフォロ・テンカラも活躍しています。
正面祭壇は1840年Karl Rösnerに、祭壇画はオーストリアの画家Leopold Kupelwieserのものです。
ローマ教皇グレコリオ13世による、ロザリオ祭を表し、聖母マリアが中央に描かれ、右にひざまずいている聖ドミニコが見られます。
ロザリオは聖母マリアへの祈りに使われる数珠状の用具です。聖母マリア信仰はかなり初期キリスト教時代からありましたが、
これを今の形にまとめたのは聖ドミニコとも言われています。
伝説によれば、前述したアルビジョア十字軍の戦いの前、1208年に聖母マリアが出現して、ロザリオを武器として贈ったとされています。
ドームのように見える天井フレスコ画は平らで、マリアとイエスが登場する三位一体です。
側廊の美しいアーチの中にはいくつもの美しい礼拝堂的空間になっています。
天井フレスコ画は聖母マリアをテーマにしたもので、1675年
Matthias Rauchmüllerによるものです。
美しい装飾の中にたくさんの絵を見ることができます。
奥に見えるのはパイプオルガンです。1896年に当初からあった古いオルガンがリーガー社製の
オルガンに替えられ、1990年に
修復されたロマンティックスタイルで、このタイプはウィーンでは最後のものです。
カトリック教会の反宗教改革による勝利から、かなりの教会はこのようなバロック様式が
多く見られるわけですが、そのバロックの中でもそれぞれの教会には個性があります。
このドミニコ会の教会は旧市街Stubentorから歩いてすぐの所にあります。