ウィーンの博物館や美術館には歴史的にとても重要で、話題性があるものがたくさん展示されています。これもヨーロッパで一番長く続いたハプスブルグ王朝の宮廷のおおもとがこの
ウィーンの街にあったことが一番大きな理由だと思います。
このコーナーでも、宝石の花束、2680カラットのエメラルド、オーストリア帝国の帝冠、
神聖ローマ帝国の帝冠など、歴史的重要な工芸品、美術品などを時間を見つけては簡単に
紹介しているわけですが、今日はルネッサンス時代の傑作である有名な黄金の塩入れについて少しまとめてみます。
この黄金の塩入れサリエラは
1540年~1543年にフィレンツェで生まれた金細工師であり、彫刻家のBenvenuto Cellini(ベンヴェヌート・チェッリーニ)によって彼がパリ滞在中、フランスワ1世からの依頼により製作されました。サリエラとはイタリア語で、塩とか胡椒入れという意味です。
その後、チロル大公のフェルディナント2世に贈られたものです。
高さ26cm,幅33.5cmで、素材は金、一部七宝で、台座は黒檀です。
こちらはサリエラを反対側から見ています。
自らの記録によれば、1枚の金板から型なしに打ち出されていて、地球を表しているそうです。
海と大地を寓意的に表す人物2人が向かい合った形になっています。
両者が足を組んでいますが、海と大地の入り組んだ関係を表現しています。
こちらの写真の左側にいる男性は海であり、中央に見られる豪華な船が塩入れです。
反対に右側の美しい女性が大地であり、1枚目の写真に見られるように神殿が見えますが、これが胡椒入れとなっています。
台座は、東西南北や、朝、正午、夕方、深夜といった人間の生活に関係するアレゴリーが施されています。
余談ですがこのサリエラに関する有名なエピソードがあります。
2003年にこのサリエラが美術史博物館から盗まれました。
これは美術史博物館の現在ではヴェネツィア派の部屋に、以前はラファエロの名画があった部屋に置かれていました。
犯人は防犯アラームの専門会社で働いていたその世界のプロで、美術史博物館のセキュリティーの甘さを指摘し、それが理解されなかったことから、それを証明するために自ら美術史博物館に忍び込んでこれを盗みました。
犯人の名前はRobert Mangです。
犯行時間は何と1分もかからない46秒以下と言われています。
地元では大変な話題になりました。
犯人の顔が公開され、中々のいい男だったので、地元では逆に獄中にいる彼のファンができたぐらいです。
結局無事に戻ってきて、2006年3月からは再び美術史博物館で見られるようになりました。
現在では美術史博物館のKunstkammerコーナーで見ることができます。