王宮の宝物館には大変貴重で、歴史的にとても重要な物がたくさんあるわけですが、
前回はルドルフ2世の帝冠(オーストリア帝国の帝冠)を紹介しましたが、今日は同じ帝冠でももっと古い神聖ローマ帝国の帝冠について書いてみたいと思います。
この神聖ローマ帝国の帝冠は、10世紀後半(もしかしたら962年)に今のドイツもしくは
ミラノで作られたもので、八角形をしていて、上には十字架が載せられています。
また帝冠の前後の頂部がアーチで結ばれています。
こちらでは神聖ローマ帝国の始まりはカール大帝の800年からと解釈されていますが、
日本の世界史の教科書にはオットー1世が戴冠し、そこから断続的に戴冠式が行われてきた962年からと書いてあると思います。
十字架部分は、1010年~1020年に追加され、頂部アーチはおそらくコンラート2世の時代の1024年~1039年にかけて作られました。
前面部のプレートの高さ約15cm,幅11.2cm,十字架の高さは9.9cmです。
素材は金、七宝、貴石(ダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルドなど)、真珠
です。
8角形の8という数字は、天と地の接点となる皇帝の象徴です。
前後左右計4枚のプレートにはぎっしりと貴石がはめこまれています。
この写真で見られる正面プレートと、後ろのプレートには12の貴石を見ることができます。
イスラエルは12部族から成り立っていたこと、イエスの12使徒といったシンボル数です。
それ以外の4枚の七宝プレートはキリスト、ダヴィデ王、ソロモン王、預言者イザヤ
が描かれ、神の慈悲、正義、智恵、長寿を意味する文字が記されています。
非常にビザンティン的な特徴が見られるこの神聖ローマ帝国の帝冠は、中世の世界統治の
概念を象徴するものでした。
この頃の王様達は、自分達こそが使徒や大祭司を継ぐものであると考えていました。
オーストリア帝国の帝冠とはまた違ったスタイルですね。