ウィーンの重要な博物館のひとつに自然史博物館があります。
ここには"自然"をテーマにした陸・海の動物のはく製、微生物、恐竜コーナー、人類の歩み、鉱物、隕石・・・等々と様々なものが展示されてます。
その中で考古学上大変重要なもののひとつにヴィレンドルフのヴィーナスがあります。
このヴィレンドルフのヴィーナスは、紀元前28.000~25.000年頃と推定され、旧石器時代のものです。
その時代に"人為的に作られた像"ということで非常に価値が高いもので、日本の高校の世界史の教科書にも載っています。(現在は知りませんが私の時代は載ってました)
高さ11cm,石灰岩で作られていて、シンメトリーに女性の豊満な裸体を表現しています。
頭は大きくて少し右側に傾き、また顔はありません。
髪型なのか、それとも何かをかぶっているのでしょうか。
肩はせまく、腕は細く、重い胸の上に置かれているようです。
腰も力強く、お腹も大きく出ています。
女性部分が意図的に強調されています。
この像は古来の地母神との関係があるでしょうか。
元々代赭石(たいしゃせき)による赤い着色が施されていました。
代赭石とは土状をした軟質の赤鉄鉱で、ドイツ語ではRötelです。
この土の赤色は生命の象徴とされていたそうです。
このヴィレンドルフのヴィーナスは特別なケースに展示されています。
さて、ヴィレンドルフ・・・Willendorfとは、ウィーンから約100km離れた、ドナウ河の最も美しいと言われるオーストリアの世界遺産のひとつであるヴァッハウ渓谷にある、人口1000人にも満たない小さな街です。
その街から1908年にこのヴィーナスが発掘されました。
こちらの写真はWillendorfの発掘された場所に記念として立てられている10倍の大きさのコピーヴィーナスです。
ヴァッハウ渓谷は通常ウィーンから日帰りで、メルク修道院と船下りが一般的ですが、以前このコーナーで
デュルンシュタインの廃墟の古城やヒンターハウスの廃墟の古城なども紹介
している通り、多くの見所があるのんびりとした美しい地域です。
そんな場所から旧石器時代の物が発掘されたわけですね。