10月27日にこのコーナーで「秋のウィーンの森」について書きました。
その時にチラッとドナウ河が登場したわけですが、今回はそのドナウ河について少し書いてみたいと思います。
ドナウ河は全長約2.860kmあり、ドイツを水源として、オーストリア、スロヴァキア、ハンガリー、クロアチア、セルビア、ルーマニア、ブルガリア、モルドバ、ウクライナと10ヵ国を通り、最後は黒海まで流れています。
その中でオーストリアのドナウは約350kmです。
全長2800km以上あるドナウ河の最も美しい所と言われている有名な「ヴァッハウ渓谷」は、幸いにしてこのオーストリアに位置しています。
ドナウ河は昔から重要な役割を担ってきました。
ギリシャ人達ももちろんドナウは知っていましたし、ローマ時代にはドナウ河が国境ともなり、そのドナウ河沿いには重要な街がいくつもありました。
ウィーンもその街のひとつです。
ウィーンのドナウ河は、永年からの河川工事のおかげで、現在見られる姿になっています。
ウィーンのドナウ河は大きく分けて4つあり、本流、新ドナウ、旧ドナウ、運河です。
ウィーンは歴史的にドナウ河の氾濫に悩まされてきました。
雨が降ったり、雪解け水が入り込むとすぐに水が溢れてきたのです。
そこで、河川工事が何回も行われては流されて・・・そんな繰り返しでした。
昔の地図を見ると、ウィーンのドナウ河は、網の目のようにぐにゃぐにゃになって、広範囲にわたって流れていました。
現在の姿になったのは、リンク道路建設時代に、昔の中心に流れ込んだラインを運河とし、さらに本流として、そのぐにゃぐにゃをほぼ直線的に川幅をたっぷりとり整備しました。
その100年後の1987年に、2回目の大きなドナウ治水工事を行った結果、新ドナウが作られます。これは、本流と並行して流されています。
さらに昔の支流が、新ドナウのずっと奥に残されていて、大きく全部で4本あるわけですね。
ウィーンに入る直前で、ドナウは本流と新ドナウに分かれ、その後本流から街の中心に行く運河が枝分かれしていきます。
ちなみに新ドナウを作る際、本流の隣に作ったわけですから、真ん中が盛り上がった部分が生じ、そこを「Donauinsel」ドナウインゼルという人口の島にしました。
全長20km以上にわたってウィーンを横たわっています。
この写真はウィーンのドナウ河のNeue Donau (ノイエ・ドナウ,日本語では新ドナウと呼んでいます)です。
下流方面に向かっての光景です。
左側奥には現代建築が多くある国連都市界隈とドナウタワーが薄らと見えています。
右岸は人口の島ドナウインゼルです。写真ではとても人口の島とは思えませんね。
新ドナウには水門が設置されていて、同時に水を濾しています。
本流に水を流しきれなくなると新ドナウの水門を調整し、新ドナウにも水を流します。
その時新ドナウの水はもちろん濁りますが、時間と共にまた綺麗になります。
美しき青きドナウをイメージするのは新ドナウで、天気のいい時には本当に水は青く見えます。
この写真は何の加工もしていませんが、青く見えますね。
新ドナウは通常、飲料水に匹適すると言われるぐらい水質がいいです。
こちらは上流方面に向かっての光景です。
左側にはウィーンの森のレオポルズベルクが見えていますね。
ウィーン市を流れるドナウ河の本流の川幅は長い所で約350m,
新ドナウの川幅は長い所で約210m ぐらいです。
ドナウ河は現在でも水が溢れ、オーストリアの郊外では水害がありますが、ウィーンの街はこれだけ水を分散させることによって水害から守られているわけです。